「……本多氏にもらった」
「本多……さん?」
「これを見れば、俺が抱え込んでる問いの答えが分かると言われた」

喬允は奏とは対照的な落ち着きをもって。そしてゆっくり立ち上がり、

「で、答えが分かった」

そう言って、奏に向かって歩みを進める。奏は「来るな!」と叫んで背中を向け、逃げ出した。しかしあっさり喬允に掴まり、よろめきつつ腕の中に倒れ込んだ。

抱き着くことも突き飛ばすこともできず、ただ喬允の胸に身体を預ける形で暫し呼吸を整えたが、やがて弱々しい声で、

「あれが……俺の棲んでる異常な世界の一面だ。喬兄はこの前、俺の世界を非難した言葉は余りに独善的だったと言って謝ったけど、“実物”を見たら考えも変わったはずだ。どう? やっぱり『最低』だろ?」
「……ああ、最低だ」

喬允が答えると同時に、奏は両手で突き飛ばして腕の中から逃れた。しかし喬允は追い掛けて再び掴まえ、壁に押し付けて身体ごと拘束した。そして普段の優しく穏やかな声からは想像もつかない昏く淀んだ低音で、

「最低なのは俺だ。映像の中でお前を辱めていた男たちに、俺は自分の姿を重ね合わせて見ていた」

奏は小さく息を呑んだ。喬允の言葉に驚いたからでもあるが、下腹部に押し付けられた喬允の股間が硬く盛り上がって、尋常でない熱を伝えていたから。

「喬兄……」

奏はそろそろと手を伸ばし、雄々しく隆起するその部分を手のひらで包み込んだ。そして、布越しに伝わる脈動を感覚に刻み付ける。

「喬兄……欲情してくれたんだ。俺に……」

奏は喜びと戸惑いが混じった声で囁きながら、喬允の輪郭を慈しむように指でなぞった。すると手の中のものがビクビクッと蠢いて、さらに布を押し上げる。この下に充溢しているのは自分に対する欲望なのだと思うと、奏の胸に言葉では表せぬ感慨が込み上げた。

それに駆り立てられるまま喬允のベルトに手を伸ばし、長い指をもつれさせながら外す。そしてその場にすとんと膝をつき、じりじりとジッパーを下ろして灼熱の塊を解放した。